知らない貴方と、蜜月旅行
「探偵にはさ、居場所だけ探してもらったんだ」
「居場所だけ、って…?」
「今、付き合ってる奴がいるとか、そういうのは調べてもらわなかった」
「……そうなんだ」
「あぁ、ただの居場所だけ」


吏仁は妙に〝居場所〟っていうのを強調して言ってきた。そして、こんなことを言う。


「だからどんな理由で離れたか、俺も知らねぇんだ」
「理由って……」
「お前、女ができたとか、それが理由だと思ってない?そんなの、わかんねぇだろ。もしかしたら、よくある保証人になって、仕方なく離れなきゃいけなくなったとか、そういう理由かもしれねぇだろ」


保証人って…。まぁ、そういう話は聞くけど…。でも、そうだとしたら、こんな近くにいないと思うんだけど…。


「保証人は違うとしても、だ。もし女が理由だったとしても。もしかしたら、お前のことが忘れられなかったんだって、あるかもしんねぇだろ」
「そんなの、」
「もし、そうだったら…だ。紫月は、あいつが忘れられねぇんだろ?じゃあ、邪魔は誰だ?……俺だろ」
「え……?」


吏仁が何を言いたいのか、何をしたいのか、分からなくなった。邪魔ってなに?


「どう転がるか、わかんねぇから」
「だから……キス、したの…?」
「今は、俺のモンだろ?」


吏仁がそう言ったと同時くらいに、裏口からなのか、亮太が出てきた。


「紫月、二人で話して来い」
「え、吏仁は…?」
「アホ。俺がいたら話ができねぇだろ。終わったら電話、な?待ってるから」


吏仁の〝待ってるから〟の言葉がすごく重たく聞こえた…。


< 142 / 185 >

この作品をシェア

pagetop