知らない貴方と、蜜月旅行
なにそれ…。初めて亮太から、そんな言葉を聞いてショックを受けた…。


「じゃあ…まずくても、美味しいって言ってたの…」
「まずいなんて言ってないだろ?」
「言ってるよ!私にはそう聞こえた!」


いつもじゃないにしろ、亮太は我慢して食べてたんだ…。あれ…?吏仁も、いつも〝美味しい〟って言って食べてる…。もしかして、吏仁も我慢して食べてたってことなのかな…。


「ごめん…。でも、紫月の飯は美味しかったよ。本当に…」


もう、なにを信じていいのか、分からなくなってしまった。嘘を付いてまで食べてたんでしょ、私の手料理。外で食べたいなぁ、って思ってたんでしょ?私のごはん食べながら…。


「でも、結婚する気はあったんだ。だから、プロポーズだってしたし、指輪だって渡した。けど、俺の中の悪魔が囁いたんだ」
「……なによ、悪魔って」


なんとなく予感はした。でも、決めつけるのは良くないから、聞いてあげようと思って聞き返した。


「……後輩の子に好きですって言われて、結婚する相手がいるって言ったんだけど、最近幸せそうじゃないですよって言われて、俺の中でプツンと切れた…」
「……それで、俺の中の悪魔が〝浮気しちゃえ!〟とでも言ったんだ」
「ごめん……」


予感は当たった。やっぱり女だった。保証人でもなんでもない、ただの女絡みだったんだ…。


でも、これでスッキリできたのかも。亮太がいなくなった理由が、分かっただけで、少しだけ……リセットまではいかないけど、前に進めそうだった。亮太が変なことを言うまでは──


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