知らない貴方と、蜜月旅行
「それって、絶対女がいるでしょ」
「……いてもいいの」
「は、どうして」
「だって、私が拒否してるんだよ?そりゃ、女作りたくなるでしょ」
「………」


でも、吏仁はいないと言った。〝紫月だけ〟って、私の目を見て言った。


「でも、吏仁は女なんかいないって言ってくれた。あの目を私は信じたいんだ」
「……俺に入る隙間はないの?」
「ごめんね、ここに来るまでは、正直亮太のことが忘れられなくて、毎日悩んでたんだ。でも、今亮太と話して、もう私たちは終わったんだって思った」


あの時、あの時点で、亮太のこと最低な男だ!って、吹っ切っていれば、こんな大事(おおごと)にはならなかったのに。私の優柔不断なせいで、吏仁を悲しませてしまった…。


「嫌だよ」
「え?…っ、ちょ、亮太っ!」


〝分かった〟って言ってくれるんだと思い込んでた。だから、油断していたのかもしれない。


奥の席は、ちょっと死角になっていて、呼ばないと店員さんは来てくれない。しかも私たちの雰囲気に水すらも多分持ってこないだろう。


それを知ってか知らずか、亮太が急に半分立ち上がると私の後頭部を押さえ付け、唇を押し当ててきた…。


「なぁ、紫月。戻ってこいよ」
「む、無理っ!私、吏仁が好きなのっ!」


あれ……自然に言ってる。吏仁が好きだって…。亮太のこと、ちゃんと過去にできてたんだ…。


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