知らない貴方と、蜜月旅行
「それはただ勘違いしてるだけだって」
「勘違い、って……」
「寂しかった時に話を聞いてくれたから、そう思い込んでるだけ。べつにその男じゃなくても、紫月は好きだと勘違いして、こうなってるよ」


そんなこと…そんなこと、ないよ…。もしあの時、私が陽悟さんの家で目覚めてたら…。


吏仁がいなくて、陽悟さんだけしかいなかったら…。


私はきっと、陽悟さんには惹かれていない。あんな強引に結婚決めて、新婚旅行にも行って、亮太の代わりに式を挙げてくれて、私の親にもすぐに挨拶しに行ってくれて、自分の親にもすぐに紹介してくれて、こうやって亮太のことが忘れられない私の為に探偵雇って探し出して、二人で話して来いなんて、そんな人どこ探したっていないよ…。


「亮太…。私は吏仁だから、好きになったの。他の人があの日に現れたとしても、私は好きになっていなかった。きっと亮太のことを忘れられずに、ずっと苦しんで生きていたと思うの」


吏仁だったから、私は好きになって、亮太のことを吹っ切ることができた。それが今気付くなんてバカかもしれないけど、亮太に今会ったからこそ分かったこの気持ち。


亮太が私のこと好きなんじゃないか、って思って期待していたのも事実。だけど、今日亮太と久しぶりに会って、話して、分かったんだ。


「紫月…」
「亮太、ありがとう。私と結婚決めてくれたこと、プロポーズしてくれたこと、嬉しかったよ。今度は浮気なんかせずに、大切な人、一人だけを愛してあげてね」


結婚決めるなんて、生半可な気持ちじゃ無理だと思う。それを決めてくれた亮太には、感謝している。


「そんな…悲しいこと…言うなよ……」
「亮太……」
「……俺は、認めない」
「えっ?……っ、いやっ、」


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