知らない貴方と、蜜月旅行
それは思いもよらない言葉だった。だって私なにも言ってないし。突然のことに、なんて言っていいのかわからず、ただ黙っていると彼がまた口を開いた。


「あー、気のせいだったか。だったら謝る。悪い」
「……」


そう言われて謝られても、私は何も言えずに黙ってしまう。どうしたらいいのだろうか。


「わけありか」
「……」
「とりあえず、座れば?」


〝わけあり〟と言われても頷けない私がいた。だけど〝座れば?〟の一言には、小さく頷いてその場に座ることができた。


「言いたくないならいいけど、そこに座ったってことは、やっぱりなんか抱えてるわけ?」
「あ…えと……」


やっぱり、どうしていいのか、わからない。でも、そもそもどうして私が何かを抱えてるのが、わかってしまったんだろう。


「あの…私、普通にしてたつもりなんですけど…」
「あー。なんで俺が気付いちゃったか、知りたいわけ」
「知りたいと言いますか…気になってしまったと言いますか…」


すると彼は〝うーん〟と、何かを考えるようにしてから答えてくれた。


「ただの勘だな」
「勘、ですか…?」
「あぁ。なんとなくの雰囲気だよ」
「……そう、ですか」


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