知らない貴方と、蜜月旅行
「もぉ…吏仁は、私をどれだけ泣かせたら気が済むのっ、」
「俺が死ぬ、その時まで…なにかあるたびに、そうやって泣いてほしい」
「……バカじゃないのっ」
「だから最後に泣くのは、俺を見送る時な?それまで俺とともに、人生歩んでくれるか?」


吏仁が私の薬指に嵌めた指輪は、あの時選んだ指輪なんかじゃなくて。私が口に出さなかった、あのダイヤとアクアマリンが一緒になってるという指輪だった。


もうやることが全部セレブすぎて、付いていけない…。でも、決してすごい金持ちってわけでもないんだ。


「もちろん、この先も吏仁と一緒にいたいっ。でも、死ぬのは私が先かもしれないよ?」
「なに言ってんだよ。俺が死なせるわけねぇだろ」
「ふふっ、吏仁らしい。でもこの指輪高かったでしょ…?私、金額知ってるもん」
「んまぁ、さすがに二ヶ月分の給料だしなぁ」
「えっ、そうなの?!もっともらってるのかと思ってた」
「アホ。ただの店長が、んな貰えるかっつーの」


きっとこんな風に、何年経っても驚かされたり、泣かされたり、笑ったり、怒ったりしていくんだろうなぁ。


「ちょっとー、蒼井さーん。そんないつまでも見つめ合ってないで、ちゃっちゃとキスしてくれません?俺らいつまで、二人のイチャつきを見てなきゃならないんすか」


あっ、忘れてた!指輪嵌めたまま、喋ってた!陽悟さんの呆れた声が響くと、みんなの笑い声があって、この時ばかりは吏仁も怒るに怒れないのか、せっかくセットしてもらった髪をクシャッとかいていた。


「あー、吏仁!せっかくの髪が台無しだよ?」
「いいんだよ、どうせあとから乱れんだろ?」
「……また、そういうこと言う」
「あとでそれ脱ぐ時、俺が手伝ってやろうか」
「ヤダよ、吏仁のエッチ!」
「一週間ずっと俺に抱かれること考えてた紫月のほうが、俺よりエッチだと思うけどな?」


きっとこれ、ずっとずーっと言われるんだろうな。なにかあるたびに…。でも、そういうの嫌いじゃないよ。今も吏仁に抱かれたいと思ってるし…。もう私、吏仁の体から離れられないよ。


「HAPPINESS IS FOREVER」
「え?」
「指輪に彫った文字。〝この幸せを永遠に〟」
「……ありがとう。この幸せがずっと続くように、ずっと傍にいてね?」
「あぁ、紫月もな?」
「もちろん。ねぇ、吏仁…キス、したい」
「あぁ、俺も」


*おしまい*


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