知らない貴方と、蜜月旅行
「泣きすぎだ」
「っ、だって…。亮太、しかっ、私には、いなかった、のにっ…!」
「男なんか腐るほどいんだろ」
「……いるかも、しれないけど!私には、亮太しか、いなかったんですっ」


確かに男なんか、腐るほどいるかもしれないけど…。それでも私は、亮太と一緒にいたかった…。


「はいはい、そうですか。どんだけ、いい男だったんだか。見てみてぇなー」
「……なんか、棒読みですけど」
「おー、感情込めてねぇからな」


なに、その言い方!カチンときて、思いきり睨んでみたけど、睨み返され、一瞬にして怖くなり目を逸らす始末…。


「それより、お前さ」
「な、なんですか」
「もっと考えること、あんじゃねーの」
「考える、ことって…」


そんなの今、考えられるわけがないじゃない。亮太がいなくなって、一日しか経ってないのに、考えることなんて…。


「明日、結婚式なんだろ?」
「そうですよ!なくなりましたけどね!」
「キャンセルしたのか?」
「はぁ?キャンセルなんか、する暇ないですし!するわけ…え、キャンセル…?」


そうだ、キャンセルって…どうなってるんだろ…。そんなこと、これっぽっちも考えてなかった。


「ど、どうしよ…」
「とりあえず、電話してみれば?」
「……です、よね」
「相手がキャンセルしてるかもしんねぇだろ」
「……はい」


それはそれで悲しい気もするけど、もしキャンセルされてなかったら、えらいこっちゃ…。彼に言われるまま、携帯を出すと電話をかけることにした。


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