知らない貴方と、蜜月旅行
「……いえ、あの、遠慮しておきます…」
「ほぅ?じゃあ、明日どうするか考えがあるんだ?」
「そ、れは……」


答えることができなかった。でも、この男(ひと)の助けを借りるのも嫌だった。


「もう一回電話してキャンセルするか?それとも、一人で行って一人で式あげるか?くくっ、一人で式…悪くねぇな」
「なっ…ひ、人の不幸で笑わないでください!」


やっぱり、ホラ。楽しんでる!助けてやるってのも絶対、変な案に決まってる。頷かなくて良かったぁ。


「ところでよぉ、一つ聞きたかったんだが」
「はいはい、なんですか…」


もう早く解放されたい。解放されたところで問題は解決しないけど、絶対おもしろがってるもん。


「婚姻届って、書いたわけ?」
「え?書きましたけど…」


急になにを聞くの?婚姻届、明日出す予定だったんだから書くに決まってるじゃない。そう思いながら、鞄から婚姻届を取り出した。


「え…あれ?嘘…なんで…」
「貸せ」


私がただ一点を見つめていると、彼はスッと私の手元から婚姻届を奪った。抵抗する気も起きないほど、私の心は動揺していた。


< 30 / 185 >

この作品をシェア

pagetop