知らない貴方と、蜜月旅行
誰がどう見たってバカでしょ。私、昨日捨てられたんだよ?ちゃんとしたお別れもできずに、いなくなったんだよ?


そんなことされるような女なんだよ?そんな女と誰が好き好んで結婚したいなんて思うのよ。


「あー、そっか」
「なんだよ」
「同情だ」
「あ?」
「捨てられた私が、かわいそうで、それで同情しちゃったんでしょ!でも、そういうのいらないから!」
「ちげーよ」


嘘だ。信じるもんか。同情以外、なにがあるっていうのよ。人は、そう簡単に結婚なんか決めれるはずがないんだから。


「いいから、行くぞ」
「や、ヤダよ!」


吏仁に腕を掴まれるも、連れて行かれるのはゴメンだと、必死に抵抗してみせた。だって、お母さんに会っちゃったら、もう終わりな気がするんだもの。


「頼むよ…」
「……だから、ヤダって、」
「母さんが、もうすぐさ……」
「え…?」


もうすぐ、ってなに…。まさか、病気とかなの…?声に詰まる吏仁を、ジッと見つめるも、吏仁は何も喋らなくなってしまった。


私は、どうするべき?吏仁のお母さんの為に、演じるべき?だって、きっと息子が結婚するって言ったら嬉しいはずだもんね。


「……わかったよ」
「紫月…?」
「報告、しに行こう…」
「あぁ…。ありがとう」


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