知らない貴方と、蜜月旅行
「あ、悪りぃ。電話だ。……なした?」


私がカレーを食べようとした時、吏仁の携帯が鳴り、その電話に吏仁はすぐに出た。


「あ?あぁ、旅行だ。急に思い立っただけだ」


あ、もしかして。電話の相手って、あの人かな?陽悟って人。同じ職場だって言ってたし。メールでもしてたのかな?


「あぁ、あの女ね。知らね」
「…っ!?」
「(おまっ、汚ねぇよ!)」


ちょうど、カレーを食べようとした時だった。〝あの女〟というのは、多分私のことだと思う。でも、吏仁は〝知らね〟と言った。


それにビックリして、持ってたスプーンを落としてしまった。当然、テーブルにカレーが飛び散り、それを見てた吏仁が口パクで〝汚い〟と言ってきた。


汚いって、吏仁が知らないふりするから、ビックリしてスプーン落としただけなのにさ!てか、なんで知らないふりなんかしたんだろ…。


「あ?はぁ……ギャーギャーうっせぇよ。もう切るぞ」


吏仁は心底嫌な顔をした後、多分だけど一方的に電話を切った。


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