知らない貴方と、蜜月旅行
「あれぇ？蒼井さん、その子抱きかかえて、どこ行くつもりですかー？」
「あ？ベッドだよ。こいつ、置いてくる」
「またまたぁ！そんなこと言って、喰べちゃうんでしょ！まったく蒼井さんったらー！」
「ちげーよ、このアホ！」


ニヤニヤしながら、俺の腕をツンツンしてくる陽悟は気味が悪い。あー、今日はゆっくりベッドで寝たかったのにな。最悪だ。


「ったく、なにも知らねぇで、グースカ寝やがって」


一人暮らしなのに無駄に広いベッドに女を寝かせ、寝顔を見ると自然と独り言を言っていた。


「遅ぇと、またあいつになんか言われんな。さっさとシャワー浴びっかな」


寝室の電気を暗くし、ドアを閉めると今度こそ浴室へと向かおうとした。


「陽悟、手出すなよ」
「やだなぁ、蒼井さんとは違いますからー！」
「どの口が言ってんだ？あ？この口かっ？」
「イッ！イデデデ…！」


陽悟の顔から手を離すと、陽悟は撫でるように自分の頬を摩った。そして、おもしろくなさそうな顔をして俺を見ていた。


「なんだ？なんか、文句あんのか？」
「べっつにー。早くシャワーしたらいいじゃないですかー」
「チッ、言われなくても行くっつーの！」


俺は軽く舌打ちをすると、なにも考えないようにシャワーを浴びた。


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