知らない貴方と、蜜月旅行

「ねぇ、吏仁」
「あ？」
「なんの仕事してるか、聞いてもいい…？」
「別に、ただの接客業だよ」
「えっ！」


接客業？吏仁が？こんな口悪いのに？お客さんに敬語使えるのかな？なんか、不安なんだけど…。


「お前さぁ」
「いたっ…！叩かないでよ！」


色々、心ん中で思っていると、突然吏仁に、おでこを引っ叩かれた。当然、私の大事なおでこはジンジンと痛いわけで、思い切り吏仁を睨み付けた。


「全部、出てるっつーの」
「は？なにが？」
「心の声が」
「えっ、嘘！」
「嘘なんか付くかよ。嘘だったらコレ、ただの暴力じゃねぇかよ」
「……ですよねぇ」


あぁぁぁ〜！やってしまった…。心の声が漏れてたなんて！でもさ、吏仁が接客って意外だったんだもん！仕方ないよね？


「あ、吏仁」
「なんだよ。早く食えよ。冷めんぞ」
「うん、食べるから！もう一つだけ！なんで、陽悟って人に私のこと知らないって言ったの？」
「あー、それか。なんか陽悟、お前の連絡先聞きたがってたろ。で、ウザイから知らねぇフリした」


あぁ、そういうこと…。でも陽悟って人、べつにそこまで私に執着してないと思うんだけどなぁ。


「で、案の定知らねぇフリしたら〝はぁ？なんで聞かなかったんですか！〟って、うるさかったから切ってやった」
「……あはは」


やっぱり吏仁が接客って、いけない気がする…。こんな短気な店員さんヤダよ！クレームなんか入ったら、怒鳴り散らしそうだもん。