知らない貴方と、蜜月旅行
「だから、名前教えとけ」
「え、どういう…」
「だから、俺がそいつのフリしてやるから」
「えっ!?」


吏仁が、亮太のフリ…。そこまでしてくれるの…?確かに、結婚する相手が変わりました!なんて、言えない…。だから、ありがたい申し出だけど…。


「その男は、担当者とは喋ったのか?」
「あ、ううん。式は、ただチャペルでドレスきて、二人だけの挙式だから、私のサイズと亮太の……あ、サイズ!」


そうだ!タキシードも、亮太のサイズ伝えてるんだった、当たり前だけど…。あぁぁぁ、ここにきて、とんでもない問題がっ…。


「落ち着け。そいつの身長は?」
「あ、178とかだったかな」
「ふぅん。体型は?俺より痩せてるのか、太ってるのか」
「あー、若干、吏仁のほうが細い気がするけど…そんなに違わないかも!」
「なら、いけんな」
「よ、よかった……」


あぁぁぁ、本当心臓に悪い…。でも、運が良かったというか…。背格好、似てて良かった…。


「で、名前はわかった。苗字は?」
「あ、うん。小西。小西亮太」
「そっ」


それだけ確認すると、吏仁は外の景色に目を移した。愛はないけど、一応私はもう、この人の妻だ。吏仁は、どんな気持ちなのだろう。元彼の振りをして、式を挙げるなんて…。


「気にすんなよ?」
「…っ、」


私から、なにかが伝わったのかな…。吏仁は、外の景色から目を逸らすことなく、私の手をキュッと握った。どこまで優しくしてくれる男なのだろう…。


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