知らない貴方と、蜜月旅行



「お待ちしておりました。小西様と佐野様ですね」
「あ、はい…。今日は、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願い致しますね」


出迎えてくれたのは、3人の女性だった。話しかけてきたのは、40代くらいの笑顔のステキな女性。


「私、木村(きむら)と申します。改めて、本日はおめでとうございます」
「あ、ありがとうございます…」


なんだろう。ここに来て、さらに緊張してきた…。〝吏仁は、小西じゃない〟そんな感情を心で思う。


「それでは、さっそく衣装決めしましょうか。まずは、新婦様のお衣装からですね。こちらへ、どうぞ」
「……はい」


〝新婦〟とか〝小西〟とか聞くたびに、吏仁に対して申し訳ない気持ちが増してくる。でも木村さんのあとを付いていかなければ、と歩き出そうとしたその時。吏仁が私の腕を掴んだ。


「気にすんなって言ったろ」
「…っ、でも!」


私の耳に顔を近付け、一言そう言った吏仁。気にするなと言われても、そう簡単に頷けなくて吏仁の顔を見上げた。すると、吏仁は嘲笑うかのように───


「ただの〝ままごと〟だと思えば?」
「は?」


おままごと…?あの、小さい時に遊んだ、おままごと…?今を演じろっていうこと?


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