知らない貴方と、蜜月旅行
「そ。これは、ただのお遊び」
「遊び、って…。私たち籍入れたんだよ?それも遊びの延長ってこと!?」
「んなわけあるか。遊びの延長で、他人にここまでするかよ」


そう、だよね…。遊びで、結婚なんてするわけないよね。私、べつに特別美人でもないし、ただの三十路過ぎた女を、遊びで嫁にするほうがおかしいよね。


「あの、小西様?佐野様?」
「あっ、ごめんなさい!」


なかなかその場から動かない私たちに、少し不思議がる木村さんを見て、私は小走りで木村さんの元へと駆け寄った。吏仁は、走ることもなく、ゆっくりと後から来たのだけれど…。





「とってもお似合いですよ」
「そう、ですか…?」
「えぇ。お似合いですよね?小西様」
「ん?あー、そうですね」


吏仁の笑顔が嘘っぽい…。ままごとだからって、気抜きすぎ…。そんな反応されると、私にはウェディングドレスは似合わないのかなと、思っちゃうじゃない…。


「ねぇ、りひ……亮太。変?(危なっ!今だけは亮太だったんだ。吏仁は封印しなきゃ)」
「いんや。似合ってるよ」
「……嘘だ。なんか、ちゃんと見てると思えないもの」
「いや、紫月って意外と乳あんだなぁ。と、思って……って、痛ってぇ!殴んなよ!」
「変態!どこ見てんのよ!!」
「男なんだから、仕方ねぇだろ」


信じらんない!ウェディングドレスじゃなくて、私の胸見てたとか、あり得ないから!!本当、ど変態!!


「あのぉ……?」
「え?あっ!ご、ごめんなさいっ!あの、えっとー」


しまった…!木村さんがいたんだった!なのに、喧嘩腰で喋っちゃったじゃないっ。てか、吏仁の言葉ヤバくないっ?まるで私の裸を見たことがない、みたいな言い方…。実際、見せたことないんだけども!でも結婚する男女が裸体を見たことがない、だなんて…。


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