知らない貴方と、蜜月旅行
吏仁だって、私のことあまり知らないくせに。なにが〝可愛い奴〟よ。バカじゃないの。


「新婦様は、どうです?」
「あ、えと……気に入りました。これにします」
「かしこまりました」


木村さんが私の体型を見て、選んでくれたドレス。もちろん自分でも見て、試着もしたけど、この道のプロの方に選んでもらったドレスのほうが自分に合ってる気がした。


木村さんが選んでくれたドレスは、マーメイドラインといって、シルエットが人魚姫のようになっていて、上半身から腰、膝あたりまで、ピッタリとフィットしている。そして膝下からフリルが付いていて、若い子が着るよりは大人の女性向きな気が私には感じた。


「では、新婦様はメイク室へ参りましょうか」
「はい」
「新郎様は、新婦様のドレスに合わせてタキシード選びましょう」


木村さんがそう言うと、一人の女性スタッフが入ってきて、私をメイク室へと案内してくれた。吏仁は木村さんとこのまま残って、タキシードを選ぶことになった。


「私、松本(まつもと)と申します。よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」


メイク室に入ると、松本さんは笑顔で挨拶をしてくれた。年は私と変わらないくらいかもしれない。


「メイクは、先ほど落とされたんですよね?」
「あ、はい。ドレスを試着する前に落とさせてもらいました」


そういえばスッピンで来て下さいと書いてあったのに、そんなことはスッポリと抜けてた私は木村さんに頼んで、試着する前に落とさせてもらっていた。


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