知らない貴方と、蜜月旅行
そうかもしれないけど…。じゃあ、どうして大事に指輪を保管していたのかな。


「とりあえず、出るぞ。話は食ってからだ。いいだろ?」
「…うん。あ、吏仁。これ、返すね」
「あー、そうだな」


私が薬指から指輪を外し、吏仁に渡すと、彼は指輪をお尻ポッケに突っ込んだ。そして吏仁と共に部屋を出て、レストランがある階へと向かった。


「紫月、食わねぇの?」
「だ、だって…吏仁…」


吏仁とレストランに来たはいいんだけれど、予想以上のレストランだったというか、場違いというか、もっと楽に食べれる感じの料理かと思っていたら、なんていうの、コレ。行ったことないけど、フレンチっていうの?


普段、ナイフとフォークなんて使わないし、テーブルマナーとか、わかんないし、庶民の私には難易度が高いんだよ…。


すると、そんな困った顔の私を見て、吏仁が立ち上がりどこかへ行ってしまった。こんなところに、一人にしないでほしいんだけど…。


すると、少しして吏仁が戻ってきた。そして、私が座ってる席の隣に来ると「行くぞ」と、ただ一言。


怒ってしまったのだろうか…。でも、私一人ここにいたくはない…。食べかけの料理とサヨナラをして、私は吏仁の背中を追うことにした。


そして吏仁がある部屋のドアを開けると、ズカズカと入って行ってしまった。私はどうしたら、いいのだろうか。待つべき?それとも入るべき?そう迷っていると、中からドアが開き「なにしてんだよ、入れよ」と言われ、恐る恐るドアを開け中に入った。


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