知らない貴方と、蜜月旅行
そう言って私に見せてきたのは、梨々香さんへの指輪だった。


「捨てる捨てないで、こんな寒ぃとこにいて風邪引いたら最悪だろ」
「あ、うん…」
「ま、気にすんな。コレがあっても、べつに未練なんかねぇから」
「…うん」


そう言うと吏仁は「部屋、帰ろうぜ」と歩き出し、私も後ろから吏仁に付いて歩き出した。


本当に吏仁は梨々香さんのこと、忘れられてるのかな。私には心の奥底で、本当は梨々香さんのこと好きなんじゃないかなって、思ってしまっているのだけれど…。


4年も経てば忘れてしまう?ただの失恋なら分かるけど、結婚式ドタキャンだよ?私は亮太のこと、多分きっと忘れることなんて出来ないと思う。





「あー、ちっと冷えたな。寒くねぇか?」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか。でも、風呂入るだろ?入れてくる」
「あっ、ありがとう」


部屋に戻るなり吏仁は、脱衣所に消えた。こういうのって普通、こっちが気付かなきゃいけないのにな…。吏仁はなんでも、私より先に行動しちゃう。


そう考えると亮太って、動かない人だったなぁ。全部私がやらないと、ダメでさぁ。って、また頭ん中亮太でいっぱいになってる…。


「紫月」
「…っ、吏仁」
「多分20分もあれば、お湯溜まるだろうから」


そう言うなり、吏仁は私から離れ、部屋を出て行こうとした。


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