知らない貴方と、蜜月旅行
「こっち、来れば?んなとこに、突っ立ってねぇでさ」
「あっ、はいっ…!」


やっぱり、怖い!威圧的すぎるでしょ…。だけど言われたんだから、しょうがない。背筋を伸ばし、大きく返事をすると二人の傍に近付いた。


「ねぇねぇ、座んなよー!汚い家だけど!」
「おい、陽悟。ここは、俺ん家だ。それに汚くなんかねぇし」
「もー、蒼井さぁん。細かいことはいいじゃないですかー」


え、嘘…。ここって、目付き悪い男の家だったの!?てっきり、人懐こそうな男の家だと思い込んでたんだけど…。


「あの…失礼…します」


なんとなく遠慮がちに言葉を発すると、フローリングの床に座った。


「おい」
「は、はいっ!」


座ったと同時に目付きも口も悪い蒼井と呼ばれていた男が、ギロリと私を睨み付け、思わず大声で返事をしてしまった。


「もぉ、蒼井さーん!そんな睨んだら、かわいそうじゃないですかー。ごめんね?」
「い、いえ…」


優しい喋り方の陽悟と呼ばれていた男が、私の顔を覗き込むと、眉を八の字にしながら謝ってきた。


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