知らない貴方と、蜜月旅行
なんだろう…。そう言われたら言われたで、ちょっぴり寂しい気持ちになるのは、ただのワガママかな。


「貴重品持てよ?」
「大丈夫、ちゃんとあるよ」


貴重品って言っても、ほとんどお金の入っていないお財布。べつに盗まれたところで、涙一つ出やしないんだけどね。


吏仁と一緒に来たのは、昨日と同じ個室のお部屋。ルームサービスも出来るって言ってたけど、吏仁なりの考えがきっとあるんだろう。


私たちが席に着くと、クロワッサンやヨーグルト。フルーツなど、どれも美味しそうなものばかり運ばれてきて、とりあえず全部食べたい私は一つずつ、口に運んでいった。


朝食を食べ終わると、さっき吏仁が言ってた通り、海に行き、二人でボーッと打ち寄せる波を見ていた。


どれくらい見ていたかな。ほんのり肌寒く感じて、吏仁にそのことを伝えると頷いてくれた。


「部屋でゆっくりするのもいいけどよ、どうせならこのホテルにある施設全部体験しね?」
「全部って…?」
「あぁ、昨日見たんだけどさ、プールもあるし、エステもある。あと、カフェもあってケーキとか食えるって」
「ケーキ?!」


ケーキなんて、早く言ってよ!!甘いもの大好き!ものすごく今、食べたい気分だったんだよねっ。


「じゃあカフェに、」
「却下。先にプールな」
「なっ、ヤダよ!」
「じゃあ、カフェなしな」
「ひどいっ!」


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