知らない貴方と、蜜月旅行
完全に負けました…。37の大人の男のワガママに、私負けました…。吏仁が強制的に選んだ水着は、さっきも言った通り面積がなさすぎる…。完全これ、Tバックだし、上だってなんかほとんど出てるって言うか…。


「お着替えは、あちらですので」


頑張ってください!とでも言うような顔で、お兄さんに着替えする場所を教えてもらい、渋々着替えてみたんだけど…。


「あぁ…無理っ…」


着替える前から分かっていたけど、着替えてみて更に愕然とした。こんなのただの罰ゲームだ…。けど、ここにいつまでもいたって仕方ない…。意を決して、吏仁がいるプールサイドへと移動した。


「………」
「ちょ、なんか、言ってよ…。勇気出して着たんだからっ。吏仁の趣味でしょ!」


プールサイドへ行くと、吏仁はもう来ていて、私を見るなり、唇に指をのせ、そしてなぜか目を逸らした。


「ねぇ、吏仁っ!」
「あ、うん…」
「もう、いいよ。感想も言ってくんない人とは、泳ぎません!」
「あ、おい!ちょい、待て」


私の言い方に焦ったのか、吏仁は慌てて私の腕を掴んだ。こんな焦った声は、初めて聞くかもしれない。


「悪りぃ、なんつーか…予想外つーか…」
「なにそれ。予想外に似合わなくて、最悪だって?」
「アホ。だったらこんな態度取るか!」
「じゃあ、なによ」
「……すげぇ、似合ってる」


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