知らない貴方と、蜜月旅行
聞かなきゃよかった…。まさか私まで恥ずかしくなるなんて…。プールサイドに頬染めたバカップル…。


「とりあえず、せっかく水着着たんだから、入ろ?」
「…おぅ」


入ろうと言ったはいいけど、本当に久々すぎて、若干怖い…。どうしよう…。と思ってる隣で、吏仁はスッと軽くジャンプして水の中へダイブした。


「紫月、来いよ」
「吏仁…、やっぱり私、」
「来いって、受け止めてやるから」
「うぅ…」


吏仁が両手を広げて、私を下から見上げる。来いって簡単に言わないでほしい…。怖いものは、怖いんだから。と、その時だった。後ろから声がしたのは。


「ねえねえ、あそこで手広げてる男の人、格好良くない?」
「え、どれどれ?あー、あの人?本当だ、イケメン!」
「きっとさ、彼女さん水が苦手なんだよ」
「うんうん、それできっと彼氏さんが受け止めようって感じなんだよね!」


まさに妄想女子。というか、ほぼ当たってるんだけどね…。声だけだから、年までは分からないけれど、キャピキャピ感はないと見た。でもやっぱり、吏仁をイケメンだって思うんだね。


「でも、なかなか彼女飛び込まないねぇ」
「うん、そんなに怖いならプール来なきゃいいのに」
「いや、水着見せたかっただけじゃない?」
「やだ、それあり得るぅ!」


カチン…と、私の中のなにかが切れた。切れたけど、なにかを言うわけでもない。私は大人だ。こんなガキ相手に、切れたらいけない。けれど、尚も続く彼女たちの妄想…。


「彼女が行かないなら、私行こうかなぁ?」
「やだぁ!それで足つったフリして、抱きつく?」
「いいねいいねぇ!」


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