Green eyed monster《悲しみに、こんにちは 例外編》
長門 春海は芹沢 ユズキを抱きしめた。
あの 芹沢 ユズキを抱きしめた。
「……今、何時だと思ってるの?」
「夕方まで時間があります。それまで、俺たちはずっと二人きりだ。」
「入家君……」
抱きしめられた彼女が
唯一 解放された右手で 彼の頬を撫でる。
入家 さくらによく似た白い頬。
まるで 西洋人形のように 冷たい 頬。
「《嫉妬》は、醜いのよ。」
「……俺はユズキ先輩が欲しい。」
「だから、入家君は私をこんな風に捕まえて 離さないつもりかしら?」
抱き締めるチカラが微かに緩む。
私はその隙を見逃さない。
「……どういう意味ですか?」
「その程度なら、貴方は勝てない。」
「えっ……」
芹沢 ユズキは怒っていた。
彼女はずっと怒っていたのだ。
「入家君が上書きしかできないのなら、
長門 春海には敵わない」
彼女は静かに怒っていた。