Green eyed monster《悲しみに、こんにちは 例外編》
私が見慣れない駅の改札をでたのは
その30分ほど後のことである。
「初めて降りたよ、この駅」
こじんまりとした小さな赤い屋根の駅は
駅長が1人で切符を切っていた。
まだこの駅には自動改札機など備わっていなかったのだ。
「俺、ずっと来てみたかった店が近くにあるですよ。」
青のニット帽を被った入家君が寒空の下で白い息をはいた。
くり毛色の髪が赤い耳を隠しきれないので、
彼が寒がっていることに気付いた。
「入家君、寒いんでしょ?大丈夫?」
俺すか?なんて能天気な顔をして
彼は後ろを歩く私を見た。
「それより、先輩。これ巻いてください……」
言い終わる前に入家君の手が周り、私の首元には彼のニット帽と同じ色の濃いブルーのマフラーが巻かれた。
「えっ、入家君!寒いでしょ!」
全くなにをしてるの なんて私が付け足す前に彼は答える
「俺は全然寒くないし、店ももうすぐなんで……」
そうやって、また君が嘘をつくから
私は自分に対して後悔するのだ。