Green eyed monster《悲しみに、こんにちは 例外編》
電車から降りたわたしたちは家まで帰る。
入家君はいいと断っているのに逆方向の私の家まで送ってくれる。
……まあ、嬉しくないことはないけど、ね。
「まだ、怒ってるの?」
不思議だ。この前まで、私が怒ってたのに今度は入家君が怒ってる。
「なんか、今日、俺……全然カッコよく無かったっすね……」
どうやら、本気で落ち込んでいるようだ。
「私、入家君のことかっこいいなんて
思ったことないもーん。」
……ちょっと、我ながら恥ずかしいぶりっ子だなあ……
「先輩……」
「……なによ。ぶりっこキモいって?」
「俺……、先輩にだけはカッコいいって思われたい……」
「……別に、みんな、かっこいいって思ってるでしょ。学園の皇子様なんだし。」
「みんなじゃ意味ないですよ……
先輩が、思わないんじゃ意味無いです。」
「……。」
「……好きです。俺、先輩が好きです。」
「……うん、知ってる。」
「……もっと、知ってください!」
私の花柄の傘はぱさりと落ちた。
月明かりのした、2つの影が重なる。
力強く抱きしめられた私は、彼の腕の中にすっぽりと収まり
私の唇に入家君のそれが触れた。
彼との初めてのキスは、なんだか冷たくほろ苦い。