アルチュール・ド・リッシモン
ジャン5世の結婚
「新しい家族って、兄上、ご結婚でもなさるのですか?」
「相手がまだ幼いゆえ、すぐにとはいかんが、そのうちに、な」
「誰なのです? その、兄上のお相手とは?」
「陛下のご息女のジャンヌ様だ」
「陛下って、まさか、狂王の、ですか?」
アルチュールが目を丸くしてそう尋ねると、ジャン5世は苦笑した。
「アルチュス、そのように大きな声で『狂王』等と言うものではないぞ」
「も、申し訳ありません………」
そう言ったものの、アルチュールの声はどんどん小さくなっていった。
パリで、フィリップ豪胆公の後見の下、嫡男ジャンの屋敷で、フィリップやマルグリットと共に育っている彼は、日々、耳にしていた。どんどんシャルル6世の病状が悪くなり、まともでいられる時間の方が少なくなってきていることを。
だが、パリから離れたブルターニュの地で縁組を素直に喜んでいる兄に、そんなことなど言えるわけがなかった。
「分かりました。とにかく、リシャールには私からよくよく言ってきかせておきましょう」
幼ないながらも、アルチュールが機転を利かせてそう言うと、ジャン5世は満足そうに頷いた。
だが、残念ながら翌年の1404年4月27日、アルチュール達の後見人であったフィリップ豪胆公が急死し、彼らの運命は少し変わってしまうのであった。
豪胆公は、後にブラバン公となる末の息子のアントワーヌを、その地方の貴族たちに前もって会わせておこうと、ブラバン地方の大都市ブリュッセルにむかっていた最中、病死したのであった。享年62歳。彼がその行く末を心配した末の息子のアントワーヌは、アルチュールと同じ、まだ10歳の若さであった。
彼の死により、嫡男であるジャン無畏公がブルゴーニュ公を継承する為、首府のディジョンに入城した。
そのトロワとジュネーブの間にある城では、荘厳な入城式が行われ、ジャン無畏公の就任もつつがなく終わった。
「相手がまだ幼いゆえ、すぐにとはいかんが、そのうちに、な」
「誰なのです? その、兄上のお相手とは?」
「陛下のご息女のジャンヌ様だ」
「陛下って、まさか、狂王の、ですか?」
アルチュールが目を丸くしてそう尋ねると、ジャン5世は苦笑した。
「アルチュス、そのように大きな声で『狂王』等と言うものではないぞ」
「も、申し訳ありません………」
そう言ったものの、アルチュールの声はどんどん小さくなっていった。
パリで、フィリップ豪胆公の後見の下、嫡男ジャンの屋敷で、フィリップやマルグリットと共に育っている彼は、日々、耳にしていた。どんどんシャルル6世の病状が悪くなり、まともでいられる時間の方が少なくなってきていることを。
だが、パリから離れたブルターニュの地で縁組を素直に喜んでいる兄に、そんなことなど言えるわけがなかった。
「分かりました。とにかく、リシャールには私からよくよく言ってきかせておきましょう」
幼ないながらも、アルチュールが機転を利かせてそう言うと、ジャン5世は満足そうに頷いた。
だが、残念ながら翌年の1404年4月27日、アルチュール達の後見人であったフィリップ豪胆公が急死し、彼らの運命は少し変わってしまうのであった。
豪胆公は、後にブラバン公となる末の息子のアントワーヌを、その地方の貴族たちに前もって会わせておこうと、ブラバン地方の大都市ブリュッセルにむかっていた最中、病死したのであった。享年62歳。彼がその行く末を心配した末の息子のアントワーヌは、アルチュールと同じ、まだ10歳の若さであった。
彼の死により、嫡男であるジャン無畏公がブルゴーニュ公を継承する為、首府のディジョンに入城した。
そのトロワとジュネーブの間にある城では、荘厳な入城式が行われ、ジャン無畏公の就任もつつがなく終わった。