アルチュール・ド・リッシモン
5章 ヘンリー5世、即位
ヘンリー4世、病床の身に
「父上、お加減はいかがですか?」
一方、父王ヘンリー4世は、よく熱を出すようになっていた。
以前患った赤痢が悪化したとも言われているが、詳しいことは分からない。分かっているのは、マルグリット達の結婚から1年を待たずして、病により亡くなったということだけである。
「今日はだいぶ良い」
そう言いながらベッドに横になったままのヘンリー4世が手を伸ばすと、傍らに居た妻のジャンヌがその手に水の入ったコップを渡すが、力が入らず、彼女が持って口にふくませてやった。
息子のハルはその様子を苦々しい表情で見ていた。
別にジャンヌに何かされたというわけではなかったのだが、父の即位とほぼ時を同じくしてイングランドにやって着、フランス語しか話そうとしない彼女が傲慢に見えたのかもしれない。彼自身、ずっとイングランドで育った為、フランス語が話せなかったこともあって。
「フランスの方はどうなっておる?」
「内輪もめが続いているようです。父上のお体が
落ち着かれましたら、共に攻めましょう。私が先陣を務めますし………」
「ふ………。相変わらずお前は勇ましいな。若さ故か? いずれにしても、羨ましいことだ………」
ヘンリー4世はそう言うと、咳き込んだ。
咳と共に少し血が混じり、それをジャンヌが甲斐甲斐しく拭いた。
が、それでもハルは嫌な顔をしていた。父の寝間着の隙間からあばら等が見え、痩せ細ってきているのが一目瞭然だったからかもしれない。
「父上、私はこれで失礼致します」
「ああ………」
父王はそう言ってチラリと息子を見たが、その世話をしていたジャンヌはチラリとも見なかった。
そのせいか、彼女は夫亡き後、幽閉されてしまうのだが、この時はそんなことなど誰も思いもしなかった───。
一方、父王ヘンリー4世は、よく熱を出すようになっていた。
以前患った赤痢が悪化したとも言われているが、詳しいことは分からない。分かっているのは、マルグリット達の結婚から1年を待たずして、病により亡くなったということだけである。
「今日はだいぶ良い」
そう言いながらベッドに横になったままのヘンリー4世が手を伸ばすと、傍らに居た妻のジャンヌがその手に水の入ったコップを渡すが、力が入らず、彼女が持って口にふくませてやった。
息子のハルはその様子を苦々しい表情で見ていた。
別にジャンヌに何かされたというわけではなかったのだが、父の即位とほぼ時を同じくしてイングランドにやって着、フランス語しか話そうとしない彼女が傲慢に見えたのかもしれない。彼自身、ずっとイングランドで育った為、フランス語が話せなかったこともあって。
「フランスの方はどうなっておる?」
「内輪もめが続いているようです。父上のお体が
落ち着かれましたら、共に攻めましょう。私が先陣を務めますし………」
「ふ………。相変わらずお前は勇ましいな。若さ故か? いずれにしても、羨ましいことだ………」
ヘンリー4世はそう言うと、咳き込んだ。
咳と共に少し血が混じり、それをジャンヌが甲斐甲斐しく拭いた。
が、それでもハルは嫌な顔をしていた。父の寝間着の隙間からあばら等が見え、痩せ細ってきているのが一目瞭然だったからかもしれない。
「父上、私はこれで失礼致します」
「ああ………」
父王はそう言ってチラリと息子を見たが、その世話をしていたジャンヌはチラリとも見なかった。
そのせいか、彼女は夫亡き後、幽閉されてしまうのだが、この時はそんなことなど誰も思いもしなかった───。