アルチュール・ド・リッシモン
11章 ヘンリー5世の結婚
ヘンリー5世の縁談
「兄上が戻られたか!」
7月に入り、兄のジャン5世が解放されたとの知らせを聞くと、アルチュールは心底ホッとした表情を見せた。
それを近くで見ていたリチャード・ド・ボーシャンとアルチュールの侍従ジョンも嬉しそうに微笑んだ。
「これで、共にフランスに行って頂けますね?」
リチャードのその言葉に、アルチュールは目を丸くした。
「フランス……? まぁ、帰りたくはありますが、また戦いなのですか?」
5年前の1415年8月にノルマンディーに上陸した後、ヘンリー5世が行った虐殺を思い出し、顔をしかめながらアルチュールがそう尋ねると、リチャードは首を横に振った。
「いえ、今回は結婚なのです」
「ああ、そういえば、先日も縁談が進んでいると仰せでしたね。もう決まったのですか?」
「ええ。シャルル6世の3女カトリーヌ姫との婚儀が決まったとのことでございます」
「ほう! それは、何よりですな」
アルチュールがそう言って微笑むと、リチャードは頷いた。
「つきましては、アーサー様にもご同行して、ご出席して頂きたい、とのことでございます」
「またですか……」
そう言うと、アルチュールはため息をついた。
「まぁ、囚われの身なのに、何不自由なく過ごさせて頂き、命の心配も無いだけありがたいのですから、否とは申せませんが……」
そう言いながらも、アルチュールは再びため息をついた。
「せめて、マルグリットに会う時間でもあればよいのですが……」
「マルグリット? それがアーサー様の想い人なのですか?」
「ええ。初恋の人で、いまだに彼女を超える人には出会っていません」
「ほう。それはそれは……」
そう言うリチャードの顔は、いつの間にか笑顔になっていた。こういう話では気を張らなくてもいいからかもしれなかった。
「陛下もご結婚が決まられた身。それ位の融通はして頂けるでしょう。私からも申し上げておきますよ」
「おお! ありがとうございます!」
パッと明るい表情になってそう言うアルチュールに、侍従のジョンもほっとした表情になった。
7月に入り、兄のジャン5世が解放されたとの知らせを聞くと、アルチュールは心底ホッとした表情を見せた。
それを近くで見ていたリチャード・ド・ボーシャンとアルチュールの侍従ジョンも嬉しそうに微笑んだ。
「これで、共にフランスに行って頂けますね?」
リチャードのその言葉に、アルチュールは目を丸くした。
「フランス……? まぁ、帰りたくはありますが、また戦いなのですか?」
5年前の1415年8月にノルマンディーに上陸した後、ヘンリー5世が行った虐殺を思い出し、顔をしかめながらアルチュールがそう尋ねると、リチャードは首を横に振った。
「いえ、今回は結婚なのです」
「ああ、そういえば、先日も縁談が進んでいると仰せでしたね。もう決まったのですか?」
「ええ。シャルル6世の3女カトリーヌ姫との婚儀が決まったとのことでございます」
「ほう! それは、何よりですな」
アルチュールがそう言って微笑むと、リチャードは頷いた。
「つきましては、アーサー様にもご同行して、ご出席して頂きたい、とのことでございます」
「またですか……」
そう言うと、アルチュールはため息をついた。
「まぁ、囚われの身なのに、何不自由なく過ごさせて頂き、命の心配も無いだけありがたいのですから、否とは申せませんが……」
そう言いながらも、アルチュールは再びため息をついた。
「せめて、マルグリットに会う時間でもあればよいのですが……」
「マルグリット? それがアーサー様の想い人なのですか?」
「ええ。初恋の人で、いまだに彼女を超える人には出会っていません」
「ほう。それはそれは……」
そう言うリチャードの顔は、いつの間にか笑顔になっていた。こういう話では気を張らなくてもいいからかもしれなかった。
「陛下もご結婚が決まられた身。それ位の融通はして頂けるでしょう。私からも申し上げておきますよ」
「おお! ありがとうございます!」
パッと明るい表情になってそう言うアルチュールに、侍従のジョンもほっとした表情になった。