アルチュール・ド・リッシモン
カトリーヌ姫の出産
「ブルゴーニュ公フィリップが私の楯持ちに、と? よくヘンリー5世陛下が許可されたな!」
どう見てもフランス風のいでたちの男を見て、アルチュール・ド・リッシモンがそう言うと、彼はうやうやしく礼をした。
「おそらく、お妃さまになられたカトリーヌ姫のとりなしもあったのでしょう。なにとぞよろしくお願い致します」
「何を申す。こちらこそ、だ。これでマルグリット姫とも連絡をとりやすくなるからな!」
アルチュールが心底嬉しそうにそう言うと、男は微笑んだ。
「フィリップ様の妹君のギュイエンヌ公夫人のことでございますね? 聞き及んでおります。微力ながら、喜んでお手伝いさせて頂きます」
「頼んだぞ!」
アルチュールは満足げに頷きながらそう言った。
そしてその言葉通り、フィリップがよこした楯持ちのラウール・グリュエルを通し、マルグリットに結婚を申し込んだところ「捕虜の身でなくなれば、考える」との返事をもらうまでにこぎつけたのだった。
アルチュールがマルグリットからそんな返事をもらってしばらくすると、イングランド、フランス双方に慶事が起こった。嫁いできたカトリーヌ姫が懐妊し、無事に男子を出産したのである。
「男子か! でかしたぞ、キャシー!」
英語しか話せないヘンリー5世は、愛妻の名を英語の愛称で呼んでいた。
それでも、修道院で育った妻は、いやな顔一つせず、疲れて汗びっしょりになっていたが、笑顔を浮かべた。
「イングランドの跡継ぎを産めて、何よりですわ」
元々、素直で出しゃばらない性格の上に修道院で育ったので、贅沢にもおぼれず、英語や宮廷でのマナーも教えられるまま、素直に吸収していったので、この頃にはすっかり英語も堪能になり、教師役の者達にも可愛がられていた。
そこにきての男子出産であったので、益々彼女の株は上がり、イングランドの宮廷は華やいだのだった。
どう見てもフランス風のいでたちの男を見て、アルチュール・ド・リッシモンがそう言うと、彼はうやうやしく礼をした。
「おそらく、お妃さまになられたカトリーヌ姫のとりなしもあったのでしょう。なにとぞよろしくお願い致します」
「何を申す。こちらこそ、だ。これでマルグリット姫とも連絡をとりやすくなるからな!」
アルチュールが心底嬉しそうにそう言うと、男は微笑んだ。
「フィリップ様の妹君のギュイエンヌ公夫人のことでございますね? 聞き及んでおります。微力ながら、喜んでお手伝いさせて頂きます」
「頼んだぞ!」
アルチュールは満足げに頷きながらそう言った。
そしてその言葉通り、フィリップがよこした楯持ちのラウール・グリュエルを通し、マルグリットに結婚を申し込んだところ「捕虜の身でなくなれば、考える」との返事をもらうまでにこぎつけたのだった。
アルチュールがマルグリットからそんな返事をもらってしばらくすると、イングランド、フランス双方に慶事が起こった。嫁いできたカトリーヌ姫が懐妊し、無事に男子を出産したのである。
「男子か! でかしたぞ、キャシー!」
英語しか話せないヘンリー5世は、愛妻の名を英語の愛称で呼んでいた。
それでも、修道院で育った妻は、いやな顔一つせず、疲れて汗びっしょりになっていたが、笑顔を浮かべた。
「イングランドの跡継ぎを産めて、何よりですわ」
元々、素直で出しゃばらない性格の上に修道院で育ったので、贅沢にもおぼれず、英語や宮廷でのマナーも教えられるまま、素直に吸収していったので、この頃にはすっかり英語も堪能になり、教師役の者達にも可愛がられていた。
そこにきての男子出産であったので、益々彼女の株は上がり、イングランドの宮廷は華やいだのだった。