アルチュール・ド・リッシモン

慌てるシャルル

「メーヌ………ロワール川流域か? 私に唯一残されていた所ではないか! イングランドはそんなに私を破滅させたいのか! 冗談ではないぞ!」
 ベッドフォード公ジョンのメーヌ州侵略の知らせを聞き、自称フランス王のシャルル7世はそう言うと、真っ青になった。
 すでに「王太子」の称号もはく奪され、実の両親にも息子として認めてもらえなかった時、唯一彼に残されていた領地を取られるのである。さすがに青くもなるというものだった。
「そ、そうだ! リッシモンを呼べ! あやつはこの間、この私の手で大元帥にしてやったのだ! こういう時こそ働いてもらわねばな! さぁ、さっさと呼んでこぬか!」
 そう叫び、荒れ狂ったように彼の名を叫ぶシャルルに、先日までの王宮とは名ばかりの小さな城で遊興にふけっていた寵臣達はチッと舌打ちをした。
 が、彼らとて領地を失うのは嫌だったので、呼んでくるよう命を下したのだった。
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