強引同期と恋の駆け引き
「そんなんだから、誰とも長く続かないのよ」
私が知っている限り、久野が付き合った女の子は長くて半年くらい。
取っ替え引っ替えというわけじゃないけど、どの彼女とも一年と続いた試しはなくて。
きっと、微妙な女心の機微に鈍感すぎるのが原因に違いないと私は踏んでいる。
「おまえに言われたかねぇよ」
「っ!?」
「中学の同窓会で再会した奴は二ヶ月。居酒屋で意気投合したとかいう野球好きは、初めての観戦デートで終わったんだっけ?」
まもなく二人が出てくるだろう教会の扉に目を向けたままの久野に苦い過去を鋭く指摘されれば、不覚にも顔に熱が上っていく。
ドキドキと高鳴った胸の音に任せて付き合ってはみたものの、どの人ともしっくりいかず長続きしなかったのは、弁解の余地もない事実で。
だけどその理由は、いまならよく分かる。
「だ、誰のせいだと思って……」
紅く染まった顔を上げられずにいた私の決死の呟きは、突如として沸き上がった歓声と拍手に阻まれ、久野の耳には届かなかったようだ。
勢いよく開かれた扉。鳴り響く祝福の鐘の音。
ついさっき神の御前で永遠の愛を誓ったばかりの新郎新婦が、ようやく姿を現した。
その場の注目が二人に釘付けになる中、落胆なのか安堵なのか自分でもよくわからないため息が零れる。
――我慢していたのに。
これ以上零さないように唇を固く引き結ぶ。
と、下げた視線に映るはらはらと舞うバラの花弁。
フラワーシャワーの中をゆっくり進む二人は、まだ列の終端であるここまで辿り着いていないはず。
不審に顔を上向けてみれば、私の遥か頭上で久野が手を叩いて、手のひらに貼り付いていた最後の一枚を落下させていた。