強引同期と恋の駆け引き
【番外編】チョコの行方 電子書籍版未収録
◇ チョコの行方 ◇
「北海道、ですか」
業務時間終了間際にかかった支社長の呼び出しに応じて出向いてみれば、唐突に切り出されて俺は面食らった。
「去年、キミに提出してもらった企画があっただろう? あれを、まずはあちらで試験的に始動してみようということになったんだ」
「ああ……って、あれがですか!?」
確かに、今年度の初めに社内で募集していた企画に、物は試しと提出していた。一度だけ本社に呼ばれてプレゼンまでさせられていたが、その後はなんの音沙汰もなかったので、てっきりポシャったと思っていたけど。そんなことになっていたのか。
「北海道でうまく軌道に乗れば、徐々に全国展開していく予定だ。その布石を打ちに、ぜひ起案者である久野くんに行ってもらいたいと思っているのだが?」
言葉は意向を問うものだが、すでに決定事項なのだろう。しがないサラリーマンに否やを唱える権利などない。
それに、自分が起てた企画を自らの手で進められるチャンスなど、長いサラリーマン人生の中でもそうそう巡ってくるものではない。ならば、望むところだ。
承諾の意を伝えると、支社長は、さらに旨味のあるエサを付け加えることを怠らない。
「今回の件が上々に回るようになれば、いずれは本社に呼ばれるだろうな。それを励みにがんばってくれ」
そんな先の長い話をされても困るが、自分次第では東京に戻ってこれるという保証があるだけありがたかった。寒いのは苦手だ。