たからもの
おじいちゃんの家
学校から帰ると家には誰もいなかった。
机の上にメモがある。
ママの字だ。
そこにはこう記されていた。
『おじいちゃんのところに行ってきます。仕事から直に行くから、悪いけどおじいちゃんのお家から印鑑を病院に持ってきて下さい。 ママより』
私はコップに水を注いで一杯飲み、スペアキーをとると、すぐに自転車をこぎだした。
おじいちゃんの家は私の家から近かった。
自転車でだいたい十分くらいだ。
それにしても、一人で病院に来いというのは珍しい。
ママはいつも学校から帰った私を車に乗せて、一緒にお見舞いに行っていた。
何か二人は重大な話をしているに違いない。
『重大』といっても死の宣告などではない。
ママの性格からして、どうせ財産のことについてだろう。ママはおばさんの妹だから相続が平等じゃなくなるのが怖いんだ。
印鑑を娘に持って来いだなんて言うほどなんだから。