たった一つの隠し事
※
一体何処に行ってしまったの…!
他に誰も居ない終業後のオフィスで、私、鈴原理子(すずはらりこ)は途方に暮れている。
大事なものが見付からないのだ。
自分のデスクの上はもちろん、抽斗だって全部引っ張り出して引っ繰り返して探したけれど、見付からない。
何処かで落としたのかもしれないから、昼間に自分が立って歩いた場所だって全部探した。
両隣の同僚や先輩のデスクの下も、課長の机の下まで。
果ては給湯室の床に這い蹲り、ランチを摂った食堂にまで出向いた。
それでも見付からない。
外回りに出た時に落としたのだろうか。
それならもう探し出すのは絶望的だ。
あれには私の大事なものが詰まってるのに。
抽斗の中身を周囲に散乱させたまま、私は床に座り込んで両手で顔を覆った。
絶望し過ぎて強張った頬が、引き攣っているのが分かる。
指の先が冷たくなって、小刻みに震えていた。
───その時。
不意に、辺りの空気がふわりと動いたような気がした。
他に誰も居ない終業後のオフィスで、私、鈴原理子(すずはらりこ)は途方に暮れている。
大事なものが見付からないのだ。
自分のデスクの上はもちろん、抽斗だって全部引っ張り出して引っ繰り返して探したけれど、見付からない。
何処かで落としたのかもしれないから、昼間に自分が立って歩いた場所だって全部探した。
両隣の同僚や先輩のデスクの下も、課長の机の下まで。
果ては給湯室の床に這い蹲り、ランチを摂った食堂にまで出向いた。
それでも見付からない。
外回りに出た時に落としたのだろうか。
それならもう探し出すのは絶望的だ。
あれには私の大事なものが詰まってるのに。
抽斗の中身を周囲に散乱させたまま、私は床に座り込んで両手で顔を覆った。
絶望し過ぎて強張った頬が、引き攣っているのが分かる。
指の先が冷たくなって、小刻みに震えていた。
───その時。
不意に、辺りの空気がふわりと動いたような気がした。
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