お日さまの笑顔に導かれ


「俺さぁ、野球辞めようと思って。どうしてもダメなんだ、新しいキャッチャー」

冬夜の話によると、新しいキャッチャーとは息が合わないらしい。詳しいことはわかんないけど、太陽がいなくなって冬夜は野球を続けるのが辛いんだって。


「すっげー弱虫だって思うけど、太陽の存在ってすげぇでけぇんだ。ピッチャーはキャッチャーが居ないと投げらんねぇし‥俺は太陽が居ないと投げらんねぇ。太陽が居たから俺は野球がすごい楽しかったんだ。」


冬夜、あたしと同じ気持ちだよ。あたしも太陽がいたから毎日が楽しかったの。

太陽以外じゃだめなの。


「あたし、さっき夏希ちゃんに、切り替えることと忘れることは違うって言われたの」


「あー‥そっかぁ」


「でも、太陽以外が隣に居ること考えらんなくて、これから先太陽なしで生きていくのはすごく寂しい」


どうしてかな‥冬夜には本音を言えるの。


「うん、俺も太陽以外のバッテリー考えらんない。‥‥でもよ?」

冬夜は真剣な目であたしを見つめた。


「太陽の兄ちゃん、ってゆーか佐山か‥佐山が言うように、切り替えていかなきゃいけねーのかもな」


ふと、冬夜は空を見上げた


「太陽‥俺今のキャッチャーと頑張ってみるわ。お前以外に俺の球うけるやつがいるなんてすっげぇ嫌だけどよ!お前が居なくても俺やってけるよ」


そういった後あたしをみて"精一杯の強がり、本音は太陽が1番なんだけどな"ってまた月みたいに笑った。


冬夜はきっと、あたしと同じ気持ちなんだ。


「あたし!あたしも、太陽なんかいなくても幸せになってみせるから!!!」


精一杯の強がり。太陽を心に閉まったまま強くなることを決意した。




「てか、バッテリーってよ?カレカノみたいなもんなんだよ。だから俺陽菜の気持ちすげーわかんだ。」


「太陽の浮気者!」


そう空にさけんだ。


「ばっか!俺はそーゆー趣味ねーから!」


冬夜とあたし2人で笑い合った。珍しく楽しいって思えた。


家に帰ったらやっぱり掃除しよう。忘れるためじゃなく、切り替えるために。
< 17 / 63 >

この作品をシェア

pagetop