【短編】七階から、君を。
***

『俺はちょっと用があるから』

と言ってソーマが出て行った後。


私はいそいそと大学に行く準備をしていた。

思い出せないなら都合が良い。
単位の心配もあるし、学校へ行かなきゃ。


絶対に部屋から出るなよと言われるほどの心労も感じないし、症状は快方に向かっているのだろうか。

何だかよく分からない、けど。

バッグにはテキストとルーズリーフ、バインダーにペンケース。
お財布やポーチに携帯も入れ、鍵を持って部屋を出る。

朝九時半。

外は暗い。

太陽が無いのは前から。

いつからかは分からないけれど、太陽は姿を消した。

頑張りに頑張った科学者たちのおかげで、太陽には劣るが日本の冬くらいの気温を保てるエネルギーが開発された。

ただしそれは地面を通す形のもので、光には長らくお目にかかっていない。

電気の光が頼り。しかし、資源は枯渇への道をフルスピードで進んでいる。

気温はやはり徐々にだが下がる一方だし、やはり寒い。

ため息をついて外へ出る。 



が、


「お前がセイナだな?」


すぐ後ろで声がした。







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