桜の木の下に【完】

私の笑いの衝動が収まってきたところで、健冶さんが柊家についてを教えてくれた。

柊家は幻獣使いの中では中の上ぐらいに権力を持っていて、桜田家は柊家よりもワンランク上に位置する。

だから、お父ちゃんが柊家に私の護衛をするように依頼をし、彼らが私の護衛することになった。もともと桜田家と柊家は仲が良いそうで、協力して今までやってこられていたという。


「でも、な……」


直弥さんは顔を暗くさせた。


「柊家はもう、オレたち三人しかいないんだ」

「え………?」

「1年ぐらい前に、強い幻獣を柊家総手で討伐したときに死んだんだ。幻獣を倒したまでは良かったけど、山奥で雨も降ってたから土砂崩れに巻き込まれて……全員、土に埋もれた」


標的だった幻獣は雨を降らせる能力を持ち、暴走して山ごと消滅させてしまう危険性があった。その幻獣は自然に発生した野生の幻獣で、人間を酷く嫌っていた。

でも、討伐って言っても消すわけじゃない。

暴走していた力を他に向けさせるための、あるいは溜まっていた力を放つための相手をするということだ。無理に押さえ込んだり、傷つけたりすることとは別だ。

でも、時と場合によっては消さなければならない……

その幻獣は力を使い果たした後、地中深くで眠りについたらしい。そうしたら、山の均衡が崩れたのか雨でぬかるんだ山壁が崩れて……


「俺たちはまだ若いから留守番でもしてろ、とここに置いていかれた。悠斗兄さんはそんな俺たちのお目付け役をした……兄さんは悔しがっていた。俺もついて行っていれば、何人かは救えたかもしれないと」


悠斗さんは柊家の中でも群を抜いて強いという。従えている幻獣もそうだけど、彼自身にも幻獣を操るのに優れた技量を持つそうだ。

だから、あんなに他の人とは違う、落ち着いた雰囲気があったのか。

自分しか二人を導くことができない、という使命感を背負っているのだろう。


「そうそう、校長は穂波(ほなみ)家の人で柊家のライバルのとこの人だ。血の繋がりはないけどオレたちを何かと手助けしてくれてる」

「…え、でも校長先生は悠斗さんとは親戚だって言ってましたけど」

「親戚?全然血は繋がってないぞ」


暗い話題からそれたと思ったら、私は変なところに引っ掛かった。

あの二人は目が似ていたし、そのことを疑問に思っているようでもなかった。

それを伝えると、二人は顔を見合わせて不思議がった。

え、似てない、の?


「穂波家が嫁いだときがあったか?あるいはその逆は」

「いいや、聞いたことねーな」

「穂波家は女しか産まれないし、柊家は男しか産まれないから混ざる可能性は充分にある……俺の方で調べてみよう」

「産まれてくる性別がもう決まってるんですか?」

「もしかして、知らなかった?」


直弥さんは驚いたように私に言った。

こくんと頷くと「うーん」と何かを考え込んだ。


「桜田家は女しか産まれないのも知らないのか?だから婿養子はそれなりの覚悟を持って桜田の名前を与えられるんだ」


お父ちゃんもお祖父ちゃんもお婿さんなのは知ってたけど……

それじゃあ、私って結構偉い?
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