桜の木の下に【完】
茶会
*健冶side*
このメンツで同じお茶をすするとは思ってもいなかった。
向こう二人とこっち四人が向かい合う形で腰を落ち着けると、明月が抹茶を点(た)てて全員の分のお茶を用意した。
それが行き渡ったが、俺たちは手をつけなかった。
道真は苦笑し、まず自らがそれを飲み干した。
最後にズズッと音をたてて飲み干し、静かに床に置いた。
「ん。うまい」
それを見た幹さんがまず最初に動いた。続いて神楽が口をつける。
でも俺と直弥はなかなか手が出せなかった。
呆れたように神楽が見てくる。
「意地張ってないで飲みなさいよ。作法なんて気にする必要ないんだから」
「あ、そうなの」
と、直弥が呟いて恐る恐る飲み始めたから、俺も肩の力を抜いた。
飲んでみたら思ってたよりも熱かったけど。
それを見届けた道真がゆっくりと口を開いた。
「…一方的ですまぬが、話があるのだ」
幹さんはその言葉に眉間にしわを寄せた。
この流れだと、道真が謝ってくる気がしたんだ。こんな形になっているのは、道真が俺たちをおもてなししたいがためだろう。
そうとなれば、続くのは謝罪だと想像できる。
「これまでの無礼を許してほしいと乞(こ)いはしない。そちらもそれを望んではいないのもわかっておる。しかし、謝らせてほしい」
「申し訳なかった」と道真は頭を下げた。明月も一緒になって頭を下げる。
俺たちはただ黙ってそれを眺めるしかできなかった。
「話が長くなるゆえ、足を崩されよ」
道真のその一言でもぞもぞと直弥が動くのがわかって恥ずかしかった。
せめて、途中で崩せよ!
正座は動くと目立つんだから!
「私が……今は明月といったな…彼女と出会ってからいくつも月日が流れた」
冒頭はそんな文句だった。