桜の木の下に【完】
学校
「は、初めましてっ!桜田のの、と申します…よ、よろしくお願いします!」
「桜田さんは一番後ろの席ですよ」
「はい…」
まずは職員室に向かって担任に教室を案内してもらい、挨拶を無事に済ませることができた。
クラスメートたちは私を興味津々に眺めていたけど、担任の言葉でどよめいた。
「ええっと……桜田さんは『幻獣』を見ることができませんが、特別に転入を許された方です。皆さんとは少し違いますが、仲良くしましょうね」
「先生!それってどういう意味ですか?『幻獣』を見られない人がここにいるって…」
「そうだそうだ」と教室内に声が充満する。
私は緊張と羞恥で俯くことしかできなくて、担任の困惑した視線から逃げた。
担任も知らないのに聞いても仕方ないんだけど……私すらも知らないんだから。
「あー、っせえな…こんなんじゃ寝てらんねー」
「……おい、しっかりしないといけないときはちゃんと起きてろ」
「おかげで何がなんだかさっぱりだ。教えてくれよ」
その会話だけでしーんと静まりかえった教室。
あ、さっきの二人だ…と声だけで判断して顔を恐る恐る上げると、ふむふむ、と寝ていたらしき青年が相方から事情を聞いていた。
二人の視線にもいたたまれなくなって、また私は俯いた。
……か、カッコいい…!
今度は顔の火照りを隠すためだったけど。
「……だいたいはわかった。アレだろ、特別、に反応しただけだろ?特別だかなんだか知んねーけど、結界通れたんだから俺らの仲間だろ?なんでそんなにイジめるんかね?」
彼の言葉が終わるとともに、授業開始の予鈴が鳴り響いた。
担任はそのメロディーでハッと我にかえったように顔を引き締めた。
「み、皆さん!一時間目の準備をしてください!桜田さんはこのあとまた職員室に行きましょう」
そこで解散となった。