桜の木の下に【完】
*神楽side*
あたしにその依頼が舞い込んできたのは、桜が咲き始めた頃だった。
「神楽、明月からののを護ってくれ」
「明月、とは一体?」
「明月は桜田佐吉の幻獣の名だ」
「なっ……史上最強とうたわれる、あの…?」
「そうだ」
「ですが、佐吉殿はまだご健在のはずでは」
「病が発覚した。心筋梗塞で、徐々に心臓の動きが悪くなっている。そのうち……」
「亡くなられる……」
「ああ。だから、神楽にはののを監視してもらう。おまえのその能力……期待している」
「御意」
あたしに直に命令が下ったのは初めてのことで、とても光栄なことだった。
いつもは文か言伝てで、あのお方のお顔を拝見することはあまりできなかった。
娘がいることは知っている。その娘に会ったこともある。でも、あたしは…………
どんな手を使ってでも、あたしはこの任務を遂行させることを堅く決意した。