桜の木の下に【完】
失ったもの
実は、俺は桜田から毒を除いたときにはすでに毒に侵されていた。
最初からつたのとげには毒が仕込まれていたが、それに気づいていなかったのだ。
倒そう、護ろう。その想いが神経を麻痺させ、通常なら毒で神経麻痺になり身体が動かなくなるところを、気力という薬で毒の神経麻痺を抑えていたのだ。
ある意味、俺は自分自身を神経麻痺にさせていたということになる。
しかし、桜田の毒を抜いたところで気が抜け、止まっていた神経の流れが動き出した。そして、感じなくなっていた毒の効果がそのときになってようやく現れたのだ。
すなわち、俺は桜田よりも長時間の間毒に侵され続けていた、ということになった。