桜の木の下に【完】

花火


*

「あ、起きた?平気?何か食べる?」

「……お水」

「りょーかいっ」


第一声は掠れていたけど、神楽はホッとしたような表情をすると元気よく駆け出して行った。

額に手のひらをあてると、びっしょりと汗をかいていた。布団を足で蹴飛ばして熱気を外に逃がす。

………いつの間にか、戻って来たんだ。


「暑い……」


そうか夏だった、と思い出してさらに暑くなるのを感じて、布団よりもいくらかマシな畳に身体をずらす。

ちょうど顔に当たった外の太陽の光が眩しかった。

どうやらお昼ぐらいのようだ。


「あー、ダメダメ。ちゃんと寝てなきゃ」

「だって、暑い…」

「熱があるんだよ。水あげるから布団に戻って」

「うん……」


そう言えば、熱を出したときのような首の痛みがある。神楽の言うように、熱があるのかもしれない。

でもさっきの夢が気になって目がギンギンに冴えていた。


「どこか変なとこはある?頭が痛いとか」

「別にないよ、ちょっとダルいぐらいかな」

「じゃあもうちょっと寝てようよ。疲れてるんだよ」

「そうかもね……」


水を飲みながら相槌を打つ。少しぬるい水を飲み干すと、無いと思っていた眠気が襲ってきた。

ふう、と頭を枕に沈ませる。

そして、ものの数秒でコテンと頭が傾いた。


「……あのー、加菜恵さん?寝るの早くないですか?」

「あら、また量が多かったかもしれないわね」

「……え、感想それだけ?」


今度は夢を見ずにぐっすりと眠ることができそうだ。
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