桜の木の下に【完】
『ノノ、ノノ、起キロ。起キテ僕ヲ起コセ。ソウシナイト、ノノガ危ナイ。君ヲ助ケタインダ。早ク……!』
誰かの叫びが聞こえる。でも、くぐもっているし遠いところから響いてくるようだった。
起きなきゃ……とは思うけど、身体が重くて動かすことができない。ダルくて、目を開けることすら億劫だ。
『桜…桜ノ木ノ下デ待ッテルカラ。ズット、待ッテルカラ……』
あ、行っちゃう、と思ったときには遅かった。ぼんやりと見えていた影がすーっと消えてしまった。
声はもう聞こえない。