桜の木の下に【完】
迷い
*
「学校閉鎖、ですか?」
「ああ。なんでも、最近は自然災害が多発しているからその対応に追われていて授業どころではないらしい」
作ってくれた夕飯を食べているとき、健冶さんはテレビのニュースを見ながら説明してくれた。
地震のみならず、気候変動、噴火、津波などの自然災害が全国のあちらこちらで起こっていて、各地の学校で次々と学校閉鎖が行われているとか。
そして、その波はこちらにまで届いたのだと、今日の帰り際に担任から告げられたらしい。
「子供の手も借りたいんじゃない?幻獣も開放されたし」
「バカ言うな。確かに開放されたが、いつ暴走してもおかしくないし体力もない。俺たちがしゃしゃり出たところで迷惑になるだけだ」
「そ?大人の世界のぎくしゃくとしたルールが無くて協力しやすいと思うけどな」
「皆が皆おまえみたいに協調性のあるやつとは限らない」
「それって褒めてる?」
「褒めてない」
これ以上何を言っても無駄だと判断したのか、健冶さんはそれっきり口をつぐんでしまった。
心なしかピリピリとした空気を纏っている気がする。
「なんかごめん」
「え、いえ……」
「あとで話聞いてあげてよ」
「え?」
直弥さんはひそひそと私に近寄ってそう囁くと、空になった食器を片付けて居間からいなくなってしまった。
話って、健冶さんのだよね?
こんなやりとりの間も、ニュースでは自然災害のことばかりが報道されていた。