桜の木の下に【完】
突入
翌日の早朝、静かな家の中にインターホンが鳴り響いた。
待ってたとばかりに、直弥さんと健冶さんは弾かれたように玄関に向かい、鍵を開けた。
そこには、数ヶ月ぶりに見たお父ちゃんが佇んでいた。
以前よりもたいぶ身体の線が細くなっていて、とても日本人には思えないような彫りの深い顔立ちになってしまっていた。
私はその纏っている異様なオーラに一瞬怯んだけど、勇気を出して言った。
「おかえり」
お父ちゃんは私のその言葉に泣きそうだけど笑顔になって、掠れた声で答えてくれた。
「ただいま」
疲労がその顔や声からひしひしと伝わり、私はそのオーラの中に自ら飛び込んでお父ちゃんに抱き付いた。
強く抱き締め返してくれたその温もりに泣きそうになったけど、まだ早いと思ってそっと離れた。
泣くのは神楽が戻ってからだ。