桜の木の下に【完】
「……自己紹介でもするか。オレは柊直弥、コイツは健冶。朝会ったよな」
「俺たちは双子だが、直弥が一日遅れで産まれてきた」
「……似てない」
ボソッと呟いてハッとした。
しまった、と思ったけど二人は気にしていないようだった。言われ慣れているのかもしれない。
それはそれでどうなのだろう。
「似てなくて良かったと思ってるけどな。健冶は悠斗に似てて堅いし」
「直弥はふざけすぎていて手がかかる」
「いや、オレ別にふざけてるわけじゃないし」
「触れないってことは、手がかかるのは認めてるんだろ」
「う……オレは正直者なんだよ。おまえは腹黒いし双子のオレでも何考えてるかたまにわからないときあるし」
「俺だって直弥の脳内回路は全く読めないよ。きっと、一本道に見えて実はあっちこっちに道がわかれてるんだろうな」
「それは健冶も一緒だろ?!」
「………ふふっ」
直弥さんが健冶さんを指差したときの顔が面白くてつい笑ってしまった。問答ですでに笑いが込みあげてきていたけど、振りきれてしまったようだ。
「笑われたんですけど」
「笑われたな。そろそろ真面目な話でもするか。桜田さんの気が紛れたところで」
「……て、おーい、聞いてんの?」
「ふふっ……聞いてまふふっ…!」
「待って、オレも笑いが……!」
「その必要はない。ふりはやめろ」
「このポーカーフェイス!少しは笑えってんだよ」
「キャラじゃない」
「………アハハっ!」
ダメだ、完全につぼった。