桜の木の下に【完】
私が目覚めてからまもなくして、神楽の意識も戻った。
お父ちゃんには寝てろって言われたけど、じっとしてなんていられない。
お父ちゃんに支えられながら神楽の眠る部屋に向かうと、ちょうどおかゆを食べているところだった。
それを見たとたん私のお腹もぐう、と鳴る。
「……それギャグ?」
「ち、違うよっ」
神楽に呆れたような目でそう言われて慌てて否定した。
時計を見ると正午を少し過ぎたぐらいだから、三時間ぐらい私は寝ていたらしい。
朝も緊張でろくに食事が喉を通らず、今になってお腹が悲鳴を上げたらしい。
帰ってきたばかりのときよりはだいぶすっきりとした顔をした加菜恵さんから、私もおかゆをいただくことにした。
玉子と梅干しとゴマが入ってて美味しそうだ。
「神楽、報告してくれ」
「はい………」
ふうふうとおかゆを冷ましながら火傷しないように慎重に食べていると、お父ちゃんが神楽の食べ終わるのを見計らってそう告げた。
彼女は空になったお椀を床に置いて姿勢を正した。
すると、サッとこの場の空気が変わり、加菜恵さんは静かに退出しようとしたけど、気になるのか留まることにしたようだった。
さらには外で待っていたのか健冶さんたちも襖を開けていそいそと座った。
神楽の言葉を固唾を飲んで待った。
「あたしが見てきたこと全てをお話ししましょう」
彼女は重そうな口を無理矢理こじ開けたように、低い声で話し始めた。