金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
本当の気持ち
あの夕陽が差し込んだ特別な空気の中で、俯いて一生懸命何かを書いている須藤くんがいる。
あ、いつものあの景色だ…って思ったら、須藤くんがおもむろに立ち上がって、私の方に歩いてきた。
え、えって驚いてあたふたする私に、須藤くんはあの笑顔で、そっと1枚の紙切れを渡す。
『今まで書いてたのはずっとこれだったんだよ』
あの声で、優しく私に言う。
私がドキドキしながら、ゆっくりと、キレイに折りたたまれたその紙をそっと広げると
『ずっと好きだった』
の文字。
私は信じられない気持ちと嬉しい気持ちが同時にこみ上げてきて、声も出せずに須藤くんを見た。
瞬間、須藤くんはその紙をパッと私の手から取り上げた。
えっ...。
驚く私に、私が大好きなあの笑顔を向けて須藤くんは言った。
『これ、君あてじゃないよ』
ーーーー!!!
声にならない声。
須藤くんはそのまま、くるっと背を向けて走っていってしまう。
...待って!
そう思って必死に伸ばしても、私の手は虚しく空を掴むだけ。
背中はどんどん小さくなって、みるみる間に消え去ってしまった。
...いや...
...いやだよ須藤くん...
...行かないで...っ!!!
はっと目が覚めた。
息がハァハァと上がっていた。
涙の筋が、枕にまで伸びていた。
現実の事じゃないとわかった瞬間
…嗚咽がもれた。
熱い涙が伝ってゆく。
私は泣いた。
胸の奥から溢れ出るこの感情を、拭うことはせずに。
...夢の世界は残酷だ。
...こんな日は、私を決して飲み込んではくれない。