金曜日の恋奏曲(ラプソディ)




「…長谷川さんは、それが可愛いからいいんだよ。」




フォローもサラリとして、確実に私の胸を掴んでいくもんだから、もうズル過ぎてムカムカする。





「…やっぱり須藤くんの顔みたい。」




なんだか、仕掛けている側も妙にドキドキするもんだ。




須藤くんの真似をして、顔を少し横に向けて須藤くんの耳に囁いた。





「……だって私、どんな須藤くんでも…大好きだよ?」





……ボンッ





…言って自分で赤くなってるようでは世話がない。




けれど、思いの外有効だったようだ。






「………ちょっとそれ、ズルくない?」





須藤くんが、少しHPを無くした声で言った。




…よし、今だ!




私は須藤くんを少し押した。




すると、抵抗力はほとんどなく、須藤くんは私から離れた。






……そして、須藤くんの顔は……。








「……………………可愛い!」





そう口走っていた。





だって、須藤くんは、顔どころか耳まで全部赤くなってて。




しかも、そんな自分がやっぱり恥ずかしいのか、こちらに目線を向けないのがまた。




ところが、可愛いなんて男の子としてはそりゃあ嬉しくないわけで、頭を軽く小突かれた。




「…いたっ。」




私がそう言うと、須藤くんはそっぽを向いたまま言う。




「…言っとくけど、可愛いのは長谷川さんだから。」





左目の涙ボクロが少し動く。





……そ、そんな




拗ねたように言われたら二重で困るんですけど!




でも須藤くんはそんなことお構い無しだ。





……あのね、私がなんでこんなに嬉しいのかって




いつも、私ばっかりいっぱいいっぱいで




余裕そうに見えてた須藤くんが




もしかしたらそんなに余裕があった訳ではなかったのかなって




それが嬉しいんだよ。





「……ふふふ。」




私が笑ったのが、お気に召さなかったようだ。




須藤くんは前のめりになって、私のおでこに自分のおでこをコツンとぶつけた。





「あたっ」




私は肩をすくめる。




ゆっくりと目を開けると、目の前にどアップの須藤くんの顔があった。




途端に、泡を食ったようになる私。




須藤くんが、少し意地悪そうに笑った。






「……ね、足りない。」





……?




足りない?




何が?




考えて、一つだけ思い至った。




そんなまさか……?




また口から心臓飛び出る!!




須藤くんが、あの悪魔の囁き声で言った。








「………………目、瞑って。」








…私は、従うしかありません。








真っ暗な視界で、怖くって、少しビクッと体が震えたことに、須藤くんは気付いたみたいだ。







私の手を、優しく握った。









「……好き。」







そう言ってみた。








「……えっ、うん。」







須藤くんはちょっとびっくりしたみたいだったけど、握る手に少し力を込めて言った。











「でも、俺の方が...相当好きだよ。」




















須藤くんの唇が、私の唇に重なった。













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