金曜日の恋奏曲(ラプソディ)



結局、耐えられなくなって先に目をそらしたのは、私の方だった。



何でかじわりと滲んできた目に、気付かれないように下を向く。



須藤くんの瞳は、心なしかほのかな熱を帯びていて、真っ直ぐに私を捉えて、私は顔に熱が集まってきているのが分かるのに、逸らせないどころかだんだん吸い込まれそうになる。



は、恥ずかしすぎてもうダメ…。



私は、震える手でシャーペンを取って握って、またなんとか声を絞り出した。





「…しゅ、宿題っ…しなきゃ、だ、から…」




声が、少しひっくり返った。



顔がかあああっと赤くなる。



…わああぁ、もう本当に恥ずかしい恥ずかしい…上手く喋ることも出来ないなんて…



しばらくの間のあと、




「…………ん。」




と小さく声がした。



短いけど、ちゃんと私の言葉を受け入れてくれている返事に、なんだか胸が熱くなる。



それから、いつものように数学のプリントに取り掛かった。



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